『仮想儀礼』篠田節子
上巻を読み終えた時、下巻は波乱なんだろうなあ、とは思ったが、いや~、どろどろです。
宗教って、怖い・・・と改めて思っちゃう本です。というか、宗教それ自体はいい。が、宗教に群がる諸々、金、政治、澱んで屈折していくトラウマ、破綻している人格、それらが怖い。
篠田氏は不気味で怖いものをリアリティ満々で描けるので、こういうのを書かれると、もう本当に怖いんです。関東大震災が起こったらを想定した『青らむ空のうつろのなかに』を読んでから、それまで結構全部読んでたんですが、怖すぎて読まなくなっちゃいました。『青らむ空』を読んでから今も思い出すだに怖いです。おいでおいでして、犬を撲殺して、これで久しぶりに肉が食える、とか(T^T)。そうならざるを得ないのは解るし、そこをイメージして書けるのは凄い。でも、明るい事を考えて生きねばいけない病気の方には荷が重過ぎます。タフで我田引水な政治家の方とかにはぜひ読んでほしいですけど。少しは想像力を見習えって感じで。
今回は連合いが読みたいという事で、久々にトライでした。
教祖の鈴木正彦が最後の最後まで客観的な目線を持っているのが、あの状況で立派。そういうところが、信者に最後まで始祖様と思われるなにか、だったのかもしれません。
そして、それまで鈴木から見れば、どこまでも女に甘いだけの男だった矢口が、最後に、本当に最後まで女に優しい菩薩のような男であったのだ、とわかる場面。最後まで優しいという強さは、やはり鈴木と二枚看板でやってきた始祖なのだな、と思わせました。
『仮想儀礼』英語の題が『The Seisen-Shinpo-Kai Case』というのが、納得。
まさに、聖泉真法会の場合、こうなった、というお話です。それはまた、様々な宗教がこうなってしまう可能性があるという事や、宗教の周りでマスコミや暴力組織や政治はこう絡んでくる、力のある悪意の者(ここでは井坂という芥川賞を受賞した事のあるという設定の作家)なら、それがたった一人でも、ここまでダメージを与えられる、という事も教えてくれる一冊です。
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